2017年04月10日

ひとひら

満開の桜の中。
近所の女子高の真新しい制服を着たまだ幼い顔の少女が父親と歩ていて、すれ違った。
これから始まる新しい生活に、どこか緊張しているような表情をしているけれど。
どうせ、一週間もすれば慣れちゃって、ケラケラ笑いながら歩くんだ。

まぁだだよ。
本当の花見は今じゃない。
開花宣言が出るとすぐにお花見の予定を立てちゃうみたいだけれど。
本当に花を楽しむなら、今からだよ。
明日か。明後日か。
桜の花の下を通ってごらん。
ひらひらと、舞い散る花びらの中を、歩くんだ。
桜色の絨毯は風が吹けばあっという間に、空に舞い上がる。
そんな時に、花を愛でた方がいいよ。

夜になって歩いていたら。
まだ花びらなんか降ってなかった。
もう少しだなぁなんて、見上げた夜桜の向こうに、ほぼ満月。
本当の満月は明日かな?
お月様のそばには、金星が光ってた。

ガキだなぁなんて笑われそうだけれど。
空に向かって手を伸ばしたよ。
手の平を広げて、満月に重ねた。
ピンクの花の向こうの、まんまるいお月様。
おいらは、いたずらのつもりで、ぐっと握りしめたんだ。

そうしたら。

握ったこぶしの周りが、明るい月光で、光ってた。
まるで、本当に月を掴んでいるみたいだった。
ふわりと、風が吹いて、ひとひらの花びらが拳に止まった。

雲をつかむような話さ。
つかんでいるのは月なんだけどね。
おいらの、拳から、月光が漏れていたなんて。

本当だよ。
本当にそうだったんだから。
キラキラ光った、金星だけが知っているさ。

明日は、きっと、もっと花びらが舞うだろう。
明日は、きっと、もっとお月様がまんまるだろう。
明日は、きっと、もっともっとだろう。
posted by 前方公演墳 at 23:36| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 小野寺隆一の前墳本当にあった事件 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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